大判例

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名古屋高等裁判所 昭和60年(ツ)2号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

上告代理人の上告理由第一点について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照して正当として是認することができる。

そして原判決が適法に確定した事実関係によれば、本件係争地は伊藤清三郎がその所有権を時効により取得したものであるが、被上告人は昭和四三・四年ころ、本件係争地の東側にある土地も含めて右伊藤清三郎の相続人である伊藤五郎から右土地を買受け、以来右係争地を自己の居宅、庭園の敷地等として利用しているが、本件係争地は鈴鹿川東岸沿いの南北に細長い土地であつて右土地単独では利用価値の乏しい土地であると認められるところ、上告人は右事情を知りながら、被上告人との間において上告人が他人から賃借中の鈴鹿郡関町大字新所所在の上告人方居宅の敷地を被上告人が買受けてしまつたため、その土地の買受けの交渉等をめぐる紛争が発生していたので、上告人はその紛争を自己に有利に解決する手段として本件一土地をその登記名義人であつた今井波子から買受けてその旨の所有権移転登記を経由したものである。

右によれば上告人は取得時効完成後にその時効取得の対象となつた土地について所有権移転登記を経由したものであるが、上告人はいわゆる背信的悪意者として被上告人の所有権取得について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらないものと認めるのが相当である。

原判決のこの点に関する判断は正当であり、原判決には所論の違法はない。論旨はひつきよう原審の認定にそわない事実を前提として原判決の不当をいうものであつて採用できない。

同第二点について

原判決は本件係争地全部の所有権を伊藤清三郎が時効により取得したと認定判断しているところ、この原審の認定判断に違法がないことは前記のとおりであるから、これと前提を異にして原判決の不当をいう論旨は理由がなく採用できない。

なお境界確定の訴は隣接する土地の双方の所有権の範囲を確認することを目的とするものではなく、権利の客体となるべき物同志を区別することを目的とするものであるから、時効取得の主張の当否は境界確定には無関係なものであるはずである。しかしながら本件のように本件係争地全部について取得時効が完成した場合には権利の客体である物同志を区別する必要性はもはや消滅し、境界確定の訴はその訴の利益を欠くに至るものというべきである。

そうすると上告人の境界確定の訴を不適法として却下した原判決は相当である。

(坂井芳雄 高橋爽一郎 宗哲朗)

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